われわれは大学病院の消化器内科として、最新の検査や治療を患者さんに提供するとともに、より新しい診断法や治療法の確立を行うために、種々の臨床研究に取り組んでおります。
ヘリコバクター・ピロリの除菌療法には早くから取り組んでおり、除菌による影響、特に胃癌発生の抑制効果、萎縮性胃炎の進展の抑制効果に関する検討を行っています。また、薬剤耐性のピロリ菌の治療法の探究や、GERDのよりよい治療法の研究を行っております。平成25年2月、胃炎の除菌治療が保険適応になり、いよいよ我が国全体で胃癌の抑止を視野に入れた除菌療法が始まりました。しかし、短期的には除菌後に胃癌の発生が完全になくなるわけではないことは当科での検討でも判明しており、除菌後の発癌の危険因子についても検討を進めているところです。また、進行胃癌に対しては腹腔内まで病変がひろがってしまった、いわゆる腹膜播種の状態にて診断された症例に対する化学療法などにつき、外科と共同で臨床試験を行っております。
カプセル内視鏡やバルーン内視鏡を中心とした小腸疾患に対する診断、治療に積極的に取り組んでいます。未知の部分が多い発展途上の分野でもあるため、研究により診断法や治療法の確立に結び付くよう努めています。特に、原因不明の消化管出血に対する小腸内視鏡検査の有用性の検討と治療法の開発およびその予後に関する研究、腸閉塞に対する小腸内視鏡の有用性に関する研究、カプセル内視鏡読影における人工知能(AI)開発、さらに小腸内視鏡の胆膵検査への応用(胆膵グループと共同)について研究を進めております。
近年、大腸疾患の増加は著しく、当科においても毎日多数の検査、治療を行っております。大腸癌については、分子標的薬を用いた抗癌剤治療の効果予測因子に関する研究、外科治療を含めた集学的治療に関する研究、既存の治療に抵抗性となった症例に対する化学療法などにつき、肝・胆・膵外科、大腸・肛門外科と共同で行っております。さらに、癌による大腸閉塞に対するステント治療(胆膵グループと共同)の研究を多施設共同で行っております。近年開発された大腸カプセル内視鏡の有用性について研究を開始しております。また、大腸癌や炎症性腸疾患と腸内細菌叢の影響について研究しています。一方、消化管出血についても高齢化に伴い増加傾向であり、再出血を繰り返します。われわれは消化管出血の危険因子を探索し、その再発予防について研究を進めております。