C型肝炎ウイルスHepatitis C virus(HCV)は1本鎖RNAウイルスである。HCV-RNAから作られる非構造蛋白のひとつであるNS5BはRNA依存性RNAポリメレース(RdRp)活性を持ち,ウイルスの複製に重要な働きをすると考えられている。NS5BによりHCV-RNA(プラス鎖)から相補的なマイナス鎖RNAが合成され,このマイナス鎖RNAを鋳型としてプラス鎖RNAが合成されると考えられている。詳細なウイルスの複製機構は解明されていないが,NS5BとHCV-RNAの結合はウイルス複製において重要であると考えられている。また,NS5BはHCV-RNA以外のRNAとも結合することが知られており,どのようなRNAを認識するかはHCV-RNAの複製機構を考える上で重要と考えられる。
当研究室では肝細胞内のmRNAの中からNS5Bと結合するものを選別した。これらのRNAがin vitroでNS5BのRdRp活性を阻害し,また,NS5Bにより複製を受けることを示した。さらに,これらのRNAがNS5Bを含めたHCV replication complexと肝細胞内でも結合することを,full genomic replicon細胞を用いて免疫沈降法により示した。加えて,replication complexの中でもNS5Bに結合することを,NS5Bを単独発現させたCOS細胞を用いて示した。
また,NS5Bに結合するRNAの配列を調べるため,In vitro selectionの手法を用いて,ランダムなRNAプールよりNS5Bに結合するRNAを選び出した。さらにHCV RNAのプラス鎖・マイナス鎖を用いて,NS5Bに結合する構造を解析した。