大学院と学位論文について
専攻研修後に東大病院消化器内科で診療・研究を行う際には、すべての先生に大学院を受験していただいています。当科から紹介されて派遣された専門研修病院に在職しているあいだに受験をしていただき大学に戻るのに備えるケース、まったく当科とは関係なく消化器内科の専門研修を他院で受けているあいだに当科に興味を持っていただき受験するケースなど、背景や受験時期は多様ですが、東大病院消化器内科に所属してサブスペシャリティ研修を進めていく段階では、大学院生であることが前提となります。
大学院の試験には、専門知識を問う一般的な記述試験に加え、英語能力を問うTOEFL試験の基準点の取得が必要となります。英語能力は、最新の学術論文や海外での臨床試験などの情報を理解するのに必要であるだけでなく、将来自身で英語論文を執筆する際に必須のスキルです。また、これからの時代を生きていく上で、ある程度の英語能力を有しておくことは非常に意味のあることと思います。専門研修中は忙しいと思いますが、ぜひ目標点達成に向けて試験準備を行っておいてください。
大学に戻ってきた大学院生は、まず専攻研修での経験を生かし、大学病院の消化器内科病棟で入院患者の診療と初期研修医や学生などの後進の指導にあたっていただきます。この期間に臨床的・基礎的なテーマについて疑問点や問題点を論理的にまとめて解決する思考のプロセスを学び、自身のサブスペシャリティ研修と各専門医資格の取得準備を進めていただくことが可能です。この期間に並行して、大学院生の間に専門的に取り組む研究テーマと所属グループを決めていただきます。大学院卒業・学位(医学博士)取得には学位論文の執筆が必要となりますが、東大消化器内科では臨床的なテーマでの学位論文も奨励しています。一方、基礎的なテーマで学位を取得する指導・研究体制も十分整っており、大学院生時代に行う基礎研究は卒業後に臨床を続けるにも必ず役立つ素養となります。
臨床研究も基礎的な実験も初心者から始めるケースがほとんどですが、トレーニングの環境が整っていますので困ることは無く、安心して大学院生活を過ごしていただけます。
大学院修了後の進路も様々で、個人個人の適性や希望や事情に合わせたキャリア形成のサポートをしています。
学位取得者数と学位論文テーマ(抜粋)
- 「細胞系譜解析を用いた肝再生および発癌におけるzone3肝細胞の挙動解析」
- 「内視鏡治療後潰瘍に対するハイドロゲルの創傷保護効果の検討」
- 「ステロイド療法を行った自己免疫膵炎の予後に関する検討~耐機能、ステロイド中止後再燃、発癌~」
- 「Helicobacter pylori陽性胃癌とHelicobacter pylori除菌後胃癌の臨床的特徴および遺伝子発現解析による検討」
- 「HGF-MET経路がB型肝炎ウイルスの複製に与える影響とそのメカニズムの解析」
- 「直接型抗ウイルス薬時代におけるC型肝癌関連肝癌の予後に関する検討」
- 「膵癌における二重鎖ノンコーディングRNAの生物学的意義の検討」
- 「胃癌におけるBclxlの役割」
- 「ヒト腸管上皮細胞におけるActinomyces odontolyticusによる膜小胞を介した病態発症機構の解明」
- 「悪性胃十二指腸閉塞に対する内視鏡的ステント留置術についての検討」
- 「発癌促進遺伝子WWPIの大腸癌における変異・増幅頻度解析」
- 「他施設大規模データベースを用いた炎症性腸疾患の再燃に関する検討」
- 「分枝型IPMNの発癌リスクの検討」
- 「悪性消化管閉塞解除後の化学療法の有動性と安全性に関する検討」
- 「膵癌由来の細胞外小胞の特異的単離による癌悪液質の病態解明」
- 「Muc6と胃癌発癌の関連および新規薬物療法の開発」
- 「Barrett食道および早期Barrett食道癌の成因・リスク因子についての検討」
- 「消化管tuft細胞の脱分化による癌起源性獲得機序の解明」
- 「胆膵癌化学療法における高齢者総合的機能評価に関する検討」
- 「B型慢性患者における核酸アナログ治療と肝発癌に関する検討」
- 「肝生検トランスクリプトームと病理AIの総合理解に基づくNAFLD個別化医療の検討」
- 「膵癌微小環境においてケモカイン受容体CCR2はマクロファージによる腫瘍促進に寄与する-膵癌マウスモデルを用いた検討-」