EUS-FNA/Bとは
超音波内視鏡を用いて、胃や十二指腸から膵臓などの臓器を観察しながら細い針で穿刺し、細胞や組織を採取する検査で、正式名称は超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引・生検(Endoscopic ultrasonography-guided fine needle aspiration / biopsy)です。1990年代より臨床に導入され、2010年に保険収載されました。穿刺の対象となる臓器は膵臓のみならず、リンパ節や胆管などもあります。
膵臓は体表から距離が遠いため、以前は膵疾患の診断のために開腹手術を要することもありましたが、本検査の普及により、患者さんへの負担を最小限にしつつ膵疾患などの診断を行うことが可能になりました。内視鏡や穿刺針の発達もあり、現在は90%以上の確率で疾患を正しく診断できるといわれています。
診断可能な疾患
膵癌が頻度としては最多ですが、その他の膵腫瘍(膵神経内分泌腫瘍など)、自己免疫性膵炎、悪性腫瘍のリンパ節転移や肝転移も挙げられます。ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)で診断が困難な胆管癌をEUS-FNA/Bで診断できることもあります。
EUS-FNA/Bの実際
症例1
腹痛を契機に膵臓癌が疑われた症例。CTで認めた膵腫瘤(図1)を、EUSで胃から観察して同定し穿刺吸引・生検を行いました(図2)。
図1
図2
症例2
図3
図4
症例3
図5
図6
症例1-3はいずれも、検査前の診断に一致する病理診断が得られています。
最近の話題
近年、悪性腫瘍に対しての化学療法(抗がん剤)を行う際に、個人の遺伝子変異に応じて薬剤を選択する遺伝子治療が発展しています。遺伝子変異を調べる検査(がんゲノムプロファイリング検査[CGP検査])の手法の1つがEUS-FNA/Bです。手術で検体を得ることも可能ですが、EUS-FNA/Bの方が患者さんの負担が少なく簡便に組織を採取できるため、特に手術による腫瘍の根治切除が困難な患者さんに対しては、EUS-FNA/Bが良い適応となります。
当科の件数・経験
当科で行ったEUS-FNA/Bは、2021年144件、2022年 214件、2023年165件と非常に件数が多いだけでなく、対象となった疾患も上記のように多様であり、豊富な経験があります。癌が疑われる症例に対して、検査中にリアルタイムで悪性の診断を行うROSE(rapid on-site evaluation)も病理部の協力のもと積極的に行っています。ROSEを行うことにより、穿刺の回数を減らし、検査の偶発症を最小限にすることができます。