肝硬度測定

肝硬度測定 (フィブロスキャン)検査とは

フィブロスキャンは、肝臓の硬さを測定する検査です。長期間にわたって肝臓に慢性的な炎症が続くと、炎症によって肝臓が壊され、壊された部分を修復することを繰り返すことで、肝臓の細胞が通常の機能を果すことのできないケロイドのような線維成分に置き換わることで、肝臓が硬くなり肝硬変に至ります。この線維化が進行すると、肝細胞がんが発生するリスクが上昇するため、慢性的に肝臓に病気を持つ患者さんの肝線維化の度合いを診断することは、その患者さんに肝細胞がんが発症するリスクを知る上でとても重要になります。従来、肝臓の線維化診断には、肝臓に針を刺して顕微鏡を使った病理診断のための組織を採取する肝生検が行われていましたが、フィブロスキャンは肝生検と異なり体に傷をつけることのない非侵襲的な検査です。
フィブロスキャンは、装置を用いて体表から機械的な振動を起こすことでせん断波という波を発生させて肝臓に伝えます。せん断波は肝臓が硬ければ早くなり、柔らかいと遅くなるため、肝臓に伝わる波の速さを測定することで肝臓の硬さを測定します。検査に要する時間は5-10分程です。
(フィブロスキャンを使った肝硬度測定: 株式会社インテグラルHPより)
(フィブロスキャンを使った肝硬度測定: 株式会社インテグラルHPより)

フィブロスキャンで分かること

フィブロスキャンを用いることで、肝臓の線維化の状態を把握することが出来ます。痛みや侵襲のない検査ですので、検査を繰り返し行うことができ、肝臓の状態の経時的な評価が可能です。フィブロスキャンは2.5~75キロパスカルの数値で結果が表示され、数値が高いほど肝臓の線維化が進行しています。また、フィブロスキャン検査の際には同時に肝臓の脂肪含有量を測定するので、脂肪肝の程度も同時に診断できます。
フィブロスキャンは、肝臓の線維化を非侵襲的に判定することが出来る有用な検査ですが、肋骨の間からせん断波を肝臓に送るため、肋骨の間が狭い患者さんの場合には肋骨によって測定値が影響を受けてしまう、腹水のある患者さんの場合や高度肥満の患者さんには測定が困難なことがあるなどの問題もあります。また、線維化以外にも肝臓の炎症や脂肪化によっても値が上昇することがあり、正しく肝臓の線維化診断を行えないこともあります。 現在、国内に1000万人以上脂肪肝の患者さんがいると言われており、その中の200万人以上が将来的に肝硬変や肝細胞がんへ移行しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)であると推測されています。当院では、検診などで脂肪肝と診断され医療機関への受診を勧められた患者さんの中から、肝臓の精密検査である肝生検が必要な患者さんを見つけるための検査としてフィブロスキャンを行っており、フィブロスキャンの結果によっては入院での肝生検をお勧めすることがあります。