1. Interventional EUSとは

胆膵疾患に対する内視鏡的診断および治療法として、十二指腸から胆管あるいは膵管にアプローチするERCPという方法が従来より広く行われ、安全かつ有用な方法として確立されています。しかし上部消化管術後や腫瘍などに伴う十二指腸狭窄など一部の症例では、内視鏡が十二指腸乳頭に到達できず、ERCPが不成功となる場合があります。また内視鏡が十二指腸乳頭に到達できても、種々の理由により予定した処置が完遂できない場合もあります。このような場合には、代替治療として経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)という方法が選択されることが多いのが現状です。しかしPTBDでは体の外にチューブや排液をためるボトルが必要となるため、生活に支障を来すというデメリットがあります。この難点を克服する新たな処置として、近年Interventional EUSという選択肢が登場し、注目を集めています。Interventional EUSは超音波内視鏡 (EUS)を用いて、胃や十二指腸から胆管・膵管・胆嚢・膵嚢胞などを穿刺し、ステントやチューブを留置したり、これらにより形成された瘻孔を介して結石除去などを行う一連の治療手技を指します。体外にチューブが出ないため、従来の経皮的治療と比較して患者さんの身体的負担を軽減することができます。またERCPが技術的に可能であっても、臨床的にInterventional EUSの方が有用であると判断される場合もあり、Interventional EUSを選択する場合もあります。

2. Interventional EUSの実際

【症例1】超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)

膵癌に伴う胆管閉塞により黄疸を来した症例。膵癌が十二指腸へ広がり内腔が狭くなったため、内視鏡が通過せず、通常のERCPによるステント留置が不可能でした。そのためEUS-BDを選択しました。胃内から超音波内視鏡で肝臓の中の胆管を観察して、胆管を穿刺します(図1a)。胆管に造影剤を満たし(図1b)、ガイドワイヤーを挿入し、胆管金属ステントを留置しました(図1c,d)。この手技により、体内にチューブを埋め込む形で胆汁の流れを確保することができ、黄疸は改善しました。


図1 膵頭部癌、閉塞性黄疸

【症例2】超音波内視鏡下膵管ドレナージ(EUS-PD)

胆管癌に対する膵頭十二指腸切除術に膵管空腸吻合部狭窄を起こし、閉塞性膵炎を繰り返した症例。ダブルバルーン内視鏡を用いたERCPを試みましたが、膵管空腸吻合部を同定することが困難であったため、EUS-PDを選択しました。胃内から超音波内視鏡で膵臓の中の膵管を観察して (図2a)、膵管を穿刺し、膵管造影を行います (図2b)。ガイドワイヤーを挿入し、膵管空腸吻合部を超えて、空腸までガイドワイヤーを誘導して、胃-膵管-空腸に膵管プラスチックステントを留置しました (図2c,d)。この治療により膵炎の再発を抑えることが可能になりました。その後、ダブルバルーン内視鏡を用いたERCPを再度行うと膵管空腸吻合部を同定できるようになり、膵管プラスチックステントを複数本追加留置することで吻合部は良好な拡張が得られ、ステント抜去後も膵炎の再発なく経過しています。


図2 膵頭十二指腸切除術後、膵管空腸吻合部狭窄

【症例3】超音波内視鏡下膵嚢胞ドレナージ(EUS-PCD)

アルコール性慢性膵炎・膵石により膵尾部の仮性嚢胞が形成され (図3a)、嚢胞が増大したことにより腹痛症状を認めたため、EUS-PCDを施行しました。胃内から超音波内視鏡ガイド下で仮性嚢胞を穿刺して金属ステントを留置しました (図3b-d)。仮性嚢胞は縮小し、症状改善が得られました。


図3 慢性膵炎、膵石、仮性嚢胞

3. 診療実績

Interventional EUSは消化器の内視鏡検査・治療のなかでも、高い技術が要求される治療であり、まだ限られた施設でしか行われていない新しい治療です。したがって全国的にも症例数は限られておりますが、当院では500件を超える豊富な経験があります。また消化管の術後の症例などではダブルバルーン内視鏡を用いたERCPとも組み合わせることで最適な治療法の選択が可能となっております。