ネクロゼクトミー(壊死物質除去)
<急性膵炎後の被包化壊死 (walled-off necrosis)とは>
重症急性膵炎による強い炎症の影響で、膵臓および膵臓周囲の脂肪が壊死物質に置き換わる被包化壊死(walled-off necrosis:WON)が膵炎後合併症として発生することがあります。WONはしばしば細菌感染によるや発熱や腹痛などの症状を来たします。感染を合併した場合は抗生剤のみで改善することもありますが、改善しない場合は内視鏡でのドレナージ治療やWON内部の壊死物質除去(ネクロゼクトミー)が行われます。内視鏡ドレナージには超音波内視鏡を原則用います。胃や十二指腸から超音波ガイド下にWONへアプローチし、ドレナージ用のステントを留置し、WON内部の膿や壊死物質を排出する経路を確保します。ステントですが以前はプラスチックステントが主流でしたが、現在は口径の大きい金属ステントであるLumen apposing metal stet (LAMS:図1)が広く使われており当科でも積極的に使用しています。
図1
<壊死物質除去(ネクロゼクトミー)の方法>
上記のように胃や十二指腸からステントを留置しても、WON内部の固形成分である壊死物質が多量の場合、充分なドレナージ効果を得られないことがあります。その場合内視鏡を胃・十二指腸からWONに挿入し、内部に貯留した壊死物質を内視鏡下に直接除去していきます(ネクロゼクトミー前:図2、ネクロゼクトミー後:図3)。治療時間や回数は壊死物質の量に左右されます。治療はWON内部の壊死物質が大部分無くなるまで継続します。
図2
図3
<当科の治療成績>
当科では急性膵炎特に重症急性膵炎の患者さんの受け入れを積極的に行っています。重症急性膵炎後にWONに至る重症患者さんは多くはありませんが、当科では年間15例以上のWON患者さんの内視鏡治療を行なっており、ネクロゼクトミーも年間でのべ60-80回程度施行しています。重症膵炎やWONの患者さんは重篤になる方が多いため、消化器内科のみではなく救急科、外科、放射線科など様々な科と連携して治療を行うことが非常に重要となります。当科ではこのように連携してのチーム医療をとても重要視しており、円滑に治療が進められるように心がけています。