早期の胃癌では胃痛や食思不振などの症状がみられることもありますが、一般的には症状がないことがほとんどです。
胃癌は日本において年間4万人以上の方が亡くなる原因となっている対策の必要な疾患です。日本における胃癌はヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因となっていることがほとんどです。本邦においては、ヘリコバクター・ピロリ菌感染は衛生環境の改善などにより減少傾向ですが、50歳以上では4割以上の感染率があると報告されております。現在は胃内視鏡検査で胃炎の確定診断がなされた方はピロリ菌感染診断の検査、および陽性であった場合の除菌治療が保険適応となっております。
胃癌はがん検診で対象となってる5種類の一つであり、現在では「50歳以上の方に2年に1回の内視鏡検診もしくは40歳以上に1年に1回の胃部X線検診」として行われております。早期胃癌であれば5年生存率は95%以上が期待できるため、早期発見・早期治療が基本となります。がん検診の受診率および要精密検査となった場合の受診率をあげることが胃癌死亡を減少させることにつながります。積極的な検診受診をお勧めします。
一般的には上部消化管内視鏡検査を行います。当院では経口もしくは経鼻内視鏡により検査を行っています。白色光による通常観察とともに、画像強調観察(Narrow Band Imaging:NBI, Blue Laser Imaging:BLI,
Linked Color Imaging:LCI など)、インジゴカルミンを併用することで病変検出率を上げています。また疑わしい病変を見つけた場合には鉗子生検を行い、病理組織診断を行います。
治療方法を考慮するうえで重要なことは1)病変の大きさ、2)病変の深達度、つまり腫瘍がどこまで深く粘膜に入り込んでいるかということ、それに加えて3)病変の組織型です。
組織型により内視鏡治療のみで根治と考えてよい範囲が異なるため、術前の生検診断は必須です。近年は拡大内視鏡検査により胃の表面構造などをよく観察することによって、病変がどこまであるのかをかなり正確に判断できるようになってます。深達度診断は難しいこともありますが、CT検査など他の検査法と組み合わせ、最終的には患者さんと治療方針についてよく相談したうえで治療法を決定しています。
早期胃癌においては現在内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が標準的に行われております。早期胃癌の範疇を超える病変については、外科手術・全身化学療法などが選択されます。