医局卒業生からの声

望月暁 医療法人社団暁翔会理事長
(品川胃腸肛門内視鏡クリニック、アルト新橋胃腸肛門内視鏡クリニック、東京胃腸肛門内視鏡クリニック神田日本橋院)

 東大消化器内科は1950年代の胃カメラ開発やその実用化に貢献し、歴史のある研究室です。この歴史ある研究室に憧れ、私が東大病院の門を叩いだのは2003年のことでした。当時、病院案内をしていただいたのが、現教授の藤城光弘先生であり、その優しいお人柄に惹かれ、東大病院での研修を決心しました。
 東大消化器内科には、全国各地から優秀な若手医師がたくさん入局されており、出身大学による壁を感じず、刺激し合いながら成長できました。臨床面においては、消化管グループ、肝臓グループ、胆膵グループの3つの専門グループに分かれており、いずれのグループの臨床研修でも、専門性が高く質の高い診療を学ぶことができ、今の私の臨床診断の基礎を形成しております。専門グループについては自由に選べ、私は消化管内視鏡の道を選択しました。内視鏡の各種手技に対してsee one, do one, teach oneができ、手技が上達するのに適している環境です。内視鏡手技においては、見て学ぶ、やって学ぶが車の両輪であり、そのいずれも欠かせません。また経験豊富な先輩方のご指導のもと、内視鏡手技の中でも、難易度が高いとされる食道・胃・大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の技術を身につけることができ、さらに後輩を指導することで手技に一層磨きがかかりました。今振り返ると、東大消化器内科での内視鏡経験は私にとって、かけがえのない経験となっています。
研究面では、国立がん研究センター、がん研有明病院などの一流病院との多施設共同臨床研究の事務局を担う貴重な機会をいただきました。ランダム化比較試験のデザインから着手し、プロトコールの作成、データモニタリング、データ解析など数々の経験を経て、無事試験を完遂した喜びは今でも忘れません。そして、諸先生方の御指導のもと、研究結果を英文紙「GUT」に発表し、内視鏡分野における一つのエビデンスを確立し、医学発展に貢献した達成感を実感できました。同時に、多くの施設の医師と交流ができ、新たな刺激を今でももらい続けています。また臨床研究においては、統計学の勉強が必要不可欠です。生物統計学の研究室との連携を通して、統計学の勉強ができるのも、大学病院での研究メリットの一つとなります。
教育面では、学内の後輩医師の指導以外に、海外から見学に来られた医師の指導をする機会もありました。また海外学会に出向し現地でhands on研修指導をし、日本の内視鏡診断や手技の海外普及に携わる機会をいただき、多くの内視鏡指導経験ができました。手技を教える楽しさを実感すると同時に、自分自身の成長を感じることができました。
 2017年にこれまで学んできた内視鏡診療をさらに発展させ、「オーダーメイド内視鏡」をベースに考案した「おもてなし医療」をより多くの患者様に提供するために、東京都内に品川胃腸肛門内視鏡クリニックを開設し、日経新聞電子版「私の道しるべ」、テレビ東京の「スーパードクター」の番組に取り上げられるなど、多くの反響をいただきました。日本国内のみならず、海外からの患者様も数多く受け入れております。
今後は、品川胃腸肛門内視鏡クリニックをベースに、アルト新橋胃腸肛門内視鏡クリニック、東京胃腸肛門内視鏡クリニック神田日本橋院と都内でマルチ展開をし、より多くの患者様に「おもてなし医療」を提供していきたい。自分の行いたい医療を安心して提供できるのも東大消化器内科との密な連携があってのことであり、引き続き東大消化器内科との医療連携を深めていきたいと考えています。
歴史ある東大消化器内科では、臨床、研究、教育のどの側面から見ても、非常に優れた研究室と体感しております。消化器内科にご興味のある若手医師の皆様は、是非とも東大消化器内科の一員となって新たな成長した自分に出会いましょう。
 
東京胃腸肛門内視鏡クリニック神田日本橋院

崎谷康佑 医療法人社団佑光会理事長
(さきたに内科・内視鏡クリニック、文京動坂診療所)

消化器内科の専門研修を終え、大学院への入学、医局への所属を考えておられる皆様、ずばり、東大病院消化器内科はとてもお勧めできます。どの組織に所属するかを決めるにあたって、「選択肢の広さ」と「サポート体制の充実」は考慮すべき、大事な要素だと考えます。東大消化器内科に所属すれば、そのどちらも、得ることができます。医師として消化器内科を選ばれた皆様は、消化管、肝臓、胆膵と多くの臓器が関わり、基礎から臨床まで、多彩な研究テーマを持つ、選択肢の幅広さに魅力を感じたのではないでしょうか。東大病院消化器内科では、どの臓器やどの研究テーマを例に挙げても、世界でも最先端を争っています。研究や指導に携わる医局の先輩医師は、能力・人格ともに心から尊敬する方ばかりで、そのサポート体制の充実は他に類を見ないと思います。

私は2005年に東京大学医学部を卒業し、JR東京総合病院で初期研修を終えた後、日本赤十字社医療センターで消化器内科の専門研修を受けました。内視鏡の手技に魅力を感じて専門医を取得したい意欲が湧いたり、消化器癌の治療を行う中で未だ全貌が解明されない癌の分子生物学的メカニズムを解き明かしたい気持ちになったりするなど、幅広く関心を持つ時期でした。

大学院へ入学し博士号の取得を目指すにあたって、明瞭なテーマを最初から持っているということは、あまりないと思います。私自身も、ピロリ菌の研究にノーベル賞が与えられた年の卒業で関心を持ってはいましたが、具体的に自分が取り組みたい研究については、大学院に入学した時点ではビジョンはできていませんでした。

大学院に入学後、消化管グループの一員として、ESDや消化管ステントなどの手技に術者として携わる環境をいただきながら、藤城光弘先生に推薦文をいただき、消化器内視鏡専門医になるなど、各種専門医資格を取得しました。研究面では、充実したサポート体制の中で、臨床と基礎の両方で論文を世に出す機会に恵まれました。東大消化器内科の充実した症例を元に書かせていただいたピロリ菌の臨床論文は、後に胃癌のガイドラインにも引用されました。科学者の夢として「自分の仕事が教科書に載ること」がよく挙げられますが、臨床家としては、「自分の携わった論文がガイドラインに載ること」は格別の嬉しさ、誇らしさを感じました。基礎研究においては、ピロリ菌による炎症性発癌において、新しいインターロイキンが重要な役割を果たすことを世界で初めて示しました。指導医の先生に「ピロリ菌と、このインターロイキンの関係については、君が世界で一番詳しい」と言われたことは忘れられません。小さな一歩ですが、科学に貢献している実感がありました。その後、医局の先輩の指導で、学術振興会の特別研究員(PD)に採用され、ニューヨークのコロンビア大学に留学する機会にも恵まれました。留学先の研究では、Cellの姉妹紙(Cancer Cell)の筆頭著者に医局の先輩と共に名を連ねることが出来、今でも誇らしく思っております。

アカデミアで活躍する多くの先輩に続きたい気持ちもありましたが、患者さんに近いところで内視鏡診療を行いたい気持ちが勝り、開業医としての道を歩むことになりました。ピロリ菌の研究で博士号を取得しましたので、「私はピロリ博士です」と患者さんに自己紹介すると、大変受けが良いです。その後も東大消化器内科の充実したサポート体制は続き、東大、千葉大、順天堂大、がん研有明病院などから、東大時代にお世話になった先生方が基幹病院で活躍されているご縁で、多くの優秀な若手医師をクリニックに派遣いただいております。医局から受けたサポートを少しでもお返しできればと、若手の先生方の優良な外勤先として貢献したいと日々、考えています。また、大学病院は「最後の砦」ですが、クリニックでは「最初の砦」として多くの患者さんに出会いますので、これまで東大消化器内科で授けていただいたリサーチマインドを活かして、日々の臨床から科学的な報告がいつか出来ればと思っています。

ピロリ菌や肝炎ウイルスによる諸問題の解決等に重要な役割を果たしてきた東大消化器内科のグループが今後、大腸癌や膵癌等の画期的な診断法や治療法を明らかにし、ノーベル賞級の仕事をしてくれるのではないかと、心から楽しみにしています。若手消化器内科医の皆様、幅広い選択肢と充実したサポート体制の東大消化器内科に、ぜひ参加をご検討ください!